かつて好きだったもの

昔、とても好きだった小説家さんがいました。その人は今でも愛好家の多い大ヒット作を生み出し、私もいわゆる「信者」となって応援していました。もう完全に過去形になってしまっていますが。関連本はほとんどを買い集め、少数にしか行き渡らなかった限定版はオークションを駆使して大枚をはたき、ほんの少しの差分に狂喜乱舞し……と、今思うと本当に熱狂的な時期でした。
転機が訪れたのはついこの間のことです。あの大ヒット作と世界観を共有した続編が発売されるとのことで、それはそれは浮かれていました。非常に特徴的な文体と、いわゆる「鬱」な方向に話を持っていきがちな作家さんだったので、かつてほどのヒットが見込めるかどうかはファンのコミュニティでも意見が分かれていました。
で、蓋を開けてみたら、まあ、もう、何というか、ひどかったです。面白い面白くない以前に、文章がまったく練れていないんです。句読点が多く、読みづらく、そしてとにかく難解な言い回しをすることに執心していらっしゃるようで、ストーリーを追う前に心が折れてしまいました。
その作家さんはSNSをやっていらっしゃったのですが、批判が段々と強まるにつれて、かなり激しい言葉で応酬されるようになってしまいました。こんな形で思い出が崩壊すると、少し、切ないですね。