忘れたくない人、覚えておきたいこと、いつまでも大切に胸にしまっておきたいこと。人は生きてゆく中で、こうした様々な出会いを繰り返しながら過ごしているのではないでしょうか。しかしながら日々たくさんの新しい思考が生まれてゆくためか、記憶はどんどん上書き保存されてゆくような気がするのです。だから「忘れたくないこと」もいつしか遠い昔として風化してしまうことだって少なくありません。こうしたことを考えると記憶とは非常に曖昧なものなのかもしれないと感じるのです。
私は出会いや過去について書かれた文学や映画作品で幾つかのお気に入りのものがあります。それらは、記憶の曖昧さを知りながらも人の潜在意識にある大切なことはいつだって心の中で生き続けることを教えてくれました。新しい思考や出来事はウェルカムですが、培ってきた過去を振り返り育むこともとても大切なのです。そして前を向き続けるだけではなく、時には過去と真摯に向き合うことがいかに自分を成長させるかを分からせてくれたと感じます。また今まで自分なりにいいことも悪いことも受け止めてきたのだという、自信に繋がるものです。これから先もずっと心に残したいと思うような素敵な出会いが詰まった人生を送ってゆきたいと、それらの作品は思わせてくれるのです。