義理人情がたっぷり詰まったマンガを胸に眠る夜

夜眠る前の至福で幸せな時間は大切にしたいものです。私はそんなこの上ない幸せを味わう一つの方法として読書を取り入れています。小説や随筆など様々な本を手に取っていますが、ここ最近はマンガを読んでいます。その作品は一話完結の夜に開く食堂のお話です。この物語は美味しい料理はもちろんのこと、骨身にしみる人情と男と女の心情がしっとりと描かれており、心に深く響きます。本当に作品に出てくる食堂で常連客と一緒にご飯を食べている気分になるのも不思議なものです。また登場する料理も庶民的で身近なのも乙だと感じます。
さて昨晩このマンガを読んでいたら、近しい女友達のことを思い出しました。今から5年位前に出会い、よくお酒を一緒に飲んだものです。時には赤提灯灯る酒場で、またある時はファミレスと場所を変えながらもお互いのことを語り明かしたよい時間を過ごしてきました。そして彼女もまたこの作品の大ファンで、新刊が出る度に二人でよく話したものです。友人は「義理人情たっぷりなストーリーが心優しくて胸が熱くなる」と語っていました。あれから年月が経ち会うことも少なくなりましたが、これを機会にまた連絡しようかと考えています。熱燗片手に美味しいつまみと楽しいネタがあれば、またあの頃に戻れそうだと感じるからです。そんなことを考えていたら寝落ちしてしまったようで、気が付いたらあっという間に朝を迎えていました。そんな夜もたまには貴重だと思いつつも、また新しい一日が始まるのでした。

小説の余韻に浸りながら考えたこと

小説を読み終える時、エンディングを前にしてとても寂しく思う時があります。少しの期間かもしれませんが一つの作品に身を置き、慣れ浸しんだことにより登場人物やストーリーに深い愛着を抱くからでしょうか。今朝読み終えた小説もまたそんな余韻がいつまでも残る作品でした。そのため朝の温かな太陽の光がいつもと違って見えたような気がしました。
この小説には、登場人物達の日々の生活に起こるささやかな喜びや悲しみが優しく綴られていました。それらは温かみを帯びながらもずっしりとした切なさが宿っているため、心にじんわりと響き続けています。また日々の営みの中に必然と起こる死や思いがけない出来事がいかに心の奥に沁みるように残り、その後の人生に影響してゆくかを考えさせられました。そして今まで培われた私自身の過去についても一つずつ紐解かれてゆくような感覚を覚えたのでした。
日々の暮らしは単調かもしれませんが、毎日刻々と変化は訪れるものです。忙しく暮らしていると小さな変化を捉えることは難しく感じるかもしれませんが、少し身をひそめて自分の心と向き合うことで、変わりゆくことに敏感になるのではないかと感じます。この小説は「現在進行形で起こっていること」「過去のこと」を受け入れながら、今を生きる術を教えてくれたように思うのでした。