数年前の夏のことです。扇風機が壊れてしまいました。それは、まだ私が小学生だった頃、お小遣いを貯めて買ったものでした。体質的にエアコンが駄目だったのですが、まだそのことをうまく母に説明できず、1人でひっそり対策を考えた結果、扇風機に行き着いたのでした。
確か、今はもう閉店してしまった電気屋さんで買ったような……。在庫処分品で、箱が付いていませんでした。そのため、薄いビニールで覆われただけのそれを、抱き抱えて帰りました。その姿を見た母に、どうして買ったのか聞かれ、やっとエアコンが苦手なことを話せた……という思い出の品です。
今はもう同居していない家族の、やつあたりの的になったこともありました。お小遣いをこつこつ貯めて買ったものだったので、当時の私はとても大切にしていたのです。彼とケンカした翌日、油性のマジックペンでぐちゃぐちゃと落書きがされていました。泣きながら雑巾で拭いていると、母に怒られた彼がふてくされながら謝ってきました。その態度が気に入らなくて、また大ゲンカした……というしょうもない思い出があります。
○年間騙し騙し使ってきたそれが、ついにうんともすんとも言わなくなったときは、悲しかったですね。今は別のが活躍しています。その風が、読んでいる小説のページを揺らすような時、ふと思い出します。同じことが前にもあったのになあ、と。